第10節 情 報
第1款 目 標
情報及び情報技術を活用するための知識と技能の習得を通して,情報に関する科学的な見方や考え方を養うとともに,社会の中で情報及び情報技術が果たしている役割や影響を理解させ,情報化の進展に主体的に対応できる能力と態度を育てる。
第2款 各 科 目
第1 情 報 A
1 目 標
コンピュータや情報通信ネットワークなどの活用を通して,情報を適切に収集・処理・発信するための基礎的な知識と技能を習得させるとともに,情報を主体的に活用しようとする態度を育てる。
2 内 容
問題解決を効果的に行うためには,目的に応じた解決手順の工夫とコンピュータや情報通信ネットワークなどの適切な活用が必要であることを理解させる。
イ 情報伝達の工夫
情報を的確に伝達するためには,伝達内容に適した提示方法の工夫とコンピュータや情報通信ネットワークなどの適切な活用が必要であることを理解させる。
(2) 情報の収集・発信と情報機器の活用
情報通信ネットワークやデータベースなどの活用を通して,必要とする情報を効率的に検索・収集する方法を習得させる。
イ 情報の発信と共有に適した情報の表し方
情報を効果的に発信したり,情報を共有したりするためには,情報の表し方に工夫や取決めが必要であることを理解させる。
ウ 情報の収集・発信における問題点
情報通信ネットワークやデータベースなどを利用した情報の収集・発信の際に起こり得る具体的な問題及びそれを解決したり回避したりする方法の理解を通して,情報社会で必要とされる心構えについて考えさせる。
(3) 情報の統合的な処理とコンピュータの活用
コンピュータの機能とソフトウェアとを組み合わせて活用することを通して,コンピュータは多様な形態の情報を統合できることを理解させる。
イ 情報の統合的な処理
収集した多様な形態の情報を目的に応じて統合的に処理する方法を習得させる。
(4) 情報機器の発達と生活の変化
情報機器の発達の歴史に沿って,情報機器の仕組みと特性を理解させる。
イ 情報化の進展が生活に及ぼす影響
情報化の進展が生活に及ぼす影響を身のまわりの事例などを通して認識させ,情報を生活に役立て主体的に活用しようとする心構えについて考えさせる。
ウ 情報社会への参加と情報技術の活用
個人が情報社会に参加する上でコンピュータや情報通信ネットワークなどを適切に使いこなす能力が重要であること及び将来にわたって情報技術の活用能力を高めていくことが必要であることを理解させる。
3 内容の取扱い
(2) 内容の(2)については,情報通信ネットワークなどを活用した実習を中心に扱うようにする。アについては,情報の検索・収集の工夫と情報を提供する側の工夫との関連性に触れるものとする。イについては,情報の利用の仕方に応じた表し方の選択や,情報の作成,利用にかかわる共通の取決めの必要性を扱うものとする。ウについては,情報の伝達手段の信頼性,情報の信憑(ぴょう)性,情報発信に当たっての個人の責任,プライバシーや著作権への配慮などを扱うものとする。
(3) 内容の(3)のアについては,周辺機器やソフトウェアなどの活用方法を扱うが,技術的な内容に深入りしないようにする。イについては,多様な形態の情報を統合的に活用することが必要な課題を設定し,文書処理,表計算,図形・画像処理,データベースなどのソフトウェアを目的に応じて使い分けたり組み合わせたりして活用する実習を中心に扱うようにする。
(4) 内容の(4)のアについては,いろいろな情報機器についてアナログとディジタルとを対比させる観点から扱うとともに,コンピュータと情報通信ネットワークの仕組みも扱うものとする。その際,技術的な内容に深入りしないようにする。イについては,情報化の進展に伴う生活スタイルや仕事の内容・方法などの変化を調べたり,討議したりする学習を取り入れるようにする。ウについては,内容の(1)から(4)のイまでの学習と関連させて扱うようにする。
第2 情 報 B
1 目 標
コンピュータにおける情報の表し方や処理の仕組み,情報社会を支える情報技術の役割や影響を理解させ,問題解決においてコンピュータを効果的に活用するための科学的な考え方や方法を習得させる。
2 内 容
問題解決においては,解決の手順と用いる手段の違いが結果に影響を与えること及びコンピュータの適切な活用が有効であることを理解させる。
イ コンピュータによる情報処理の特徴
コンピュータを適切に活用する上で知っておくべきコンピュータによる情報処理の長所と短所を理解させる。
(2) コンピュータの仕組みと働き
文字,数値,画像,音などの情報をコンピュータ上で表す方法についての基本的な考え方及び情報のディジタル化の特性を理解させる。
イ コンピュータにおける情報の処理
コンピュータの仕組み,コンピュータ内部での基本的な処理の仕組み及び簡単なアルゴリズムを理解させる。
ウ 情報の表し方と処理手順の工夫の必要性
コンピュータを活用して情報の処理を行うためには,情報の表し方と処理手順の工夫が必要であることを理解させる。
(3) 問題のモデル化とコンピュータを活用した解決
身のまわりの現象や社会現象などを通して,モデル化とシミュレーションの考え方や方法を理解させ,実際の問題解決に活用できるようにする。
イ 情報の蓄積・管理とデータベースの活用
情報を蓄積・管理するためのデータベースの概念を理解させ,簡単なデータベースを設計し,活用できるようにする。
(4) 情報社会を支える情報技術
情報通信と計測・制御の仕組み及び社会におけるそれらの技術の活用について理解させる。
イ 情報技術における人間への配慮
情報技術を導入する際には,安全性や使いやすさを高めるための配慮が必要であることを理解させる。
ウ 情報技術の進展が社会に及ぼす影響
情報技術の進展が社会に及ぼす影響を認識させ,情報技術を社会の発展に役立てようとする心構えについて考えさせる。
3 内容の取扱い
(2) 内容の(2)については,コンピュータや模型などを使った学習を取り入れるようにする。ア及びイについては,図を用いた説明などによって基本的な考え方を理解させることを重視するようにする。イのコンピュータ内部での基本的な処理の仕組みについては,一つ一つの命令がステップで動いていることを扱う程度とする。アルゴリズムの具体例については,並べ替えや探索などのうち,基本的なものにとどめるようにする。ウについては,生徒自身に工夫させることができる簡単な課題を用いて,実習を中心に扱い,結果を生徒同士で相互評価させるような学習を取り入れるようにする。
(3) 内容の(3)については,ソフトウェアやプログラミング言語を用い,実習を中心に扱うようにする。その際,ソフトウェアの利用技術やプログラミング言語の習得が目的とならないようにする。ア及びイについては,基本的な考え方は必ず扱うが,実習については,生徒の実態等に応じ,いずれかを選択して扱うことができる。アについては,内容の(2)のイ,ウ及び(4)のアと関連付けた題材や,時間経過や偶然性に伴って変化する現象などのうち,簡単にモデル化できる題材を扱い,数理的,技術的な内容に深入りしないようにする。
(4) 内容の(4)のアについては,動作を確認できるような学習を取り入れるようにする。ウについては,情報技術の進展が社会に及ぼす影響について,情報通信ネットワークなどを活用して調べたり,討議したりする学習を取り入れるようにする。
第3 情 報 C
1 目 標
情報のディジタル化や情報通信ネットワークの特性を理解させ,表現やコミュニケーションにおいてコンピュータなどを効果的に活用する能力を養うとともに,情報化の進展が社会に及ぼす影響を理解させ,情報社会に参加する上での望ましい態度を育てる。
2 内 容
コンピュータなどにおける,文字,数値,画像,音などの情報のディジタル化の仕組みを理解させる。
イ 情報機器の種類と特性
身のまわりに見られる情報機器について,その機能と役割を理解させるとともに,ディジタル化により多様な形態の情報が統合的に扱えることを理解させる。
ウ 情報機器を活用した表現方法
情報機器を活用して多様な形態の情報を統合することにより,伝えたい内容を分かりやすく表現する方法を習得させる。
(2) 情報通信ネットワークとコミュニケーション
情報通信ネットワークの仕組みとセキュリティを確保するための工夫について理解させる。
イ 情報通信の効率的な方法
情報伝達の速度や容量を表す単位について理解させるとともに,情報通信を速く正確に行うための基本的な考え方を理解させる。
ウ コミュニケーションにおける情報通信ネットワークの活用
電子メールや電子会議などの情報通信ネットワーク上のソフトウェアについて,コミュニケーションの目的に応じた効果的な活用方法を習得させる。
(3) 情報の収集・発信と個人の責任
多くの情報が公開され流通している実態と情報の保護の必要性及び情報の収集・発信に伴って発生する問題と個人の責任について理解させる。
イ 情報通信ネットワークを活用した情報の収集・発信
身のまわりの現象や社会現象などについて,情報通信ネットワークを活用して調査し,情報を適切に収集・分析・発信する方法を習得させる。
(4) 情報化の進展と社会への影響
社会で利用されている代表的な情報システムについて,それらの種類と特性,情報システムの信頼性を高める工夫などを理解させる。
イ 情報化が社会に及ぼす影響
情報化が社会に及ぼす影響を様々な面から認識させ,望ましい情報社会の在り方を考えさせる。
3 内容の取扱い
(2) 内容の(2)のアのセキュリティを確保するための工夫については,身近な事例を通して,個人認証や暗号化の必要性,情報通信ネットワークの保守・管理の重要性などを扱うものとする。イについては,誤り検出・訂正,情報の圧縮などの原理を平易に扱うものとする。ウについては,実習を中心に扱うようにする。
(3) 内容の(3)のアの情報の保護の必要性については,プライバシーや著作権などの観点から扱い,情報の収集・発信に伴って発生する問題については,誤った情報や偏った情報が人間の判断に及ぼす影響,不適切な情報への対処法などの観点から扱うようにする。イについては,適切な題材を選び,情報の収集から分析・発信までを含めた一連の実習を中心に扱うようにする。情報の分析については,表計算ソフトウェアなどの簡単な統計分析機能やグラフ作成機能などを扱うようにする。
(4) 内容の(4)のイについては,情報化が社会に及ぼす影響を,情報通信ネットワークなどを活用して調べたり,討議したりする学習を取り入れるようにする。
第3款 各科目にわたる指導計画の作成と内容の取扱い
1 指導計画の作成に当たっては,次の事項に配慮するものとする。
(2) 各科目の目標及び内容等に即してコンピュータや情報通信ネットワークなどを活用した実習を積極的に取り入れること。原則として,「情報A」では総授業時数の2分の1以上を,「情報B」及び「情報C」では総授業時数の3分の1以上を,実習に配当すること。
(3) 情報機器を活用した学習を行うに当たっては,生徒の健康と望ましい習慣を身に付ける観点から,照明やコンピュータの使用時間などに留意すること。
2 内容の取扱いに当たっては,次の事項に配慮するものとする。
(2) 授業で扱う具体例などについては,情報技術の進展に対応して適宜見直す必要があるが,技術的な内容に深入りしないよう留意すること。