幼稚部における教育は、幼児が自ら意欲をもって環境とかかわることによりつくり出きれる具体的な活動を通して、その目標の達成を図るものである。学校においてはこのことを踏まえ、幼児期にふさわしい生活が展開され適切な指導が行われるよう、次の事項に留意して調和のとれた組織的、発展的な指導計画を作成しなければならない。
1 一般的な留意事項
(2) 指導計画作成に当たっては、次に示すところにより、具体的なねらい及び内容を明確に設定し、適切な環境を構成することなどにより活動が選択・展開されるようにすること。
② 環境は具体的なねらいを達成するために適切なものとなるように構成し、幼児が自らその環境にかかわることにより様々な活動を展開しつつ必要な体験を得られるようにすること。その際、幼児の生活する姿や発想を大切にし、常にその環境が適切なものとなるようにすること。
③ 幼児の行う具体的な活動は、生活の流れの中で様々に変化するものであることに留意し、幼児が望ましい方向に向かって自ら活動を展開していくことができるよう必要な援助をすること。
(4) 幼児の生活は、入学当初の一人一人の遊びや教師との触れ合いを通して学校生活に親しみ安定していく時期から、やがて友達同士で目的をもって学校生活を展開し深めていく時期などに至るまでの過程を様々に経ながら広げられていくものであることを考慮し、活動がそれぞれの時期にふさわしく展開されるようにすること。
(5) 幼児の行う活動は、個人、グループ、学級全体などで多様に展開されるものであるが、いずれの場合にも、−人一人の幼児が興味や欲求を十分に満足させるよう適切な援助を行うようにすること。
(6) 幼児の生活は、家庭を基盤として地域社会を通じて次第に広がりをもつものであることに留意し、家庭との連携を十分図るなど、学校生活が家庭や地域社会と連続性を保ちつつ展開されるようにすること。
(7) 長期的に発達を見通した年、期、月などにわたる指導計画や、これとの関連を保ちながらより具体的な幼児の生活に即した週、日などの指導計画を作成し、適切な指導が行われるようにすること。特に、週、日などの指導計画については、幼児の心身の障害の状態や生活のリズム、幼児を取り巻く環境等に配慮し、幼児の意識や興味の連続性のある活動が相互に関連して幼稚部における生活の自然な流れの中に組み込まれるようにすること。
(8) 幼児の実態及び幼児を取り巻く状況の変化などに即して指導の過程についての反省や評価を適切に行い、常に指導計画の改善を図ること。
(9) 幼児の経験を広め、社会性を養い、好ましい人間関係を育てるため、学校生活全体を通じて、地域の幼児等と活動を共にする枚会を積極的に設けるようにすること。
(10) 学校医等との連絡を密にし、幼児の心身の障害の状態に応じた保健及び安全に十分留意すること。
(11) 児童福祉施設及び医療機関等との連携を密にし、指導の効果を上げるよう努めること。
(2) 道徳性の芽生えを培うに当たっては、基本的な生活習慣の形成を図るとともに、幼児が他の幼児とのかかわりの中で他人の存在に気付き相手を尊重する気持ちで行動できるようにし、また、自然や身近な動植物に親しむことなどを通して豊かな心情が育つようにすること。
(3) 思考力の芽生えを培うに当たっては、遊びを通して気付いたり試したりする直接的な体験の中で知的好奇心を育て、次第によく見よく聞きよく考える意欲や態度を身に付けるようにすること。
(4) 安全に関する指導に当たっては、情緒の安定を図り、遊びを通して状況に応じて機敏に自分の体を動かすことができるようにするとともに、危険な場所や事物などが分かり安全についての理解を深めるようにすること。また、交通安全の習慣を身に付けるようにするとともに、災害時に適切な行動がとれるようにするための訓練なども行うようにすること。
(5) 行事の指導に当たっては、幼稚部における生活の自然な流れの中で生活に変化や潤いを与え、幼児が主体的に楽しく活動できるようにすること。なお、それぞれの行事についてはその教育的価値を十分検討し適切なものを精選し幼児の負担にならないようにすること。
(6) 以上のほか、次の事項に留意すること。
② 聾(ろう)学校においては、幼児の視覚、触覚及び保有する聴覚などを十分に活用して言葉を習得させ、これを用いて日常生活に必要な知識を広げたり考えたりしようとする態度を育てること。
③ 精神薄弱者を教育する養護学校においては、幼児の障害の状態に応じて必要な内容を選定し、それらを生活の自然な流れの中に位置付けるなどして、幼児の活動力を高めるようにすること。
④ 肢体不自由者を教育する養護学校においては、幼児の運動・動作の状態等に応じ、可能な限り体験的な活動を通して経験を広めるようにすること。
⑤ 病弱者を教育する養護学校においては、幼児の病弱の状態等を十分に考慮し、身体活動が負担過重とならないようにすること。