第1 目 標
自然に対する関心を高め、観察、実験などを行い、科学的に調べる能力と態度を育てるとともに自然の事物・現象についての理解を深め、科学的な見方や考え方を養う。
第2 各分野の目標及び内容
〔第1分野〕
1 目 標
(2) 化学的な事物・現象についての観察や実験を行い、観察・実験技能を習得させるとともに、身の回りの物質とその変化、化学変化と原子、分子、イオンなどについて理解させ、これらの事象に対する科学的な見方や考え方を養う。
(3) 物理的な事物・現象についての観察や実験を行い、観察・実験技能を習得させるとともに、身の回りの物理現象、電流、運動とエネルギーなどについて理解させ、これらの事象に村する科学的な見方や考え方を養う。
(4) 物質やエネルギーに関する事物・現象に対する関心を高め、意欲的に調べる活動を行わせるとともに、これらの事象を日常生活と関連付けて考察する態度を育てる。
身の回りの物質についての観察、実験を通して、水溶液の性質、物質の状態変化及び気体について理解させるとともに、物質の性質や変化の調べ方の基礎を身に付けさせる。
ア 水溶液
(イ) 物質が水に溶ける様子の観察、実験を行い、水溶液の中では溶質が均一に分散していること及び水に溶けていない物質を分離する方法を見いだすこと。
(ウ) 一定量の水に溶け得る物質の重さは物質の種類や水の温度によって違うことを調べる実験を行い、これを利用して溶質を分離できることを見いだすこと。
(イ) 物質が状態変化するときの温度の測定を行い、純粋な物質の融点や沸点は物質の種類によって決まっていること及び触点や沸点を利用して物質を確かめたり、沸点の違いによって物質を分離できたりすることを見いだすこと。
身の回りの事物・現象についての観察、実験を通して、光、音、熱、力及び圧力の規則性について理解させるとともに、これらの事象に対する科学的な見方や考え方を養う。
ア 光と音
(イ) 凸レンズの働きについての実験を行い、物体の位置と像の位置及び像の大きさの関係を見いだすこと。
(ウ) 音についての実験を行い、音が空気中などを伝わること及び音の大きさや高さは、発音体の振動の仕方に関係することを知ること。
(イ) 種類の異なる物質を加熱する実験を行い、物質の温度変化は物質の種類に関係があることを知ること。
(イ) 物体の質量と重さの違いについて理解するとともに、力の大きさは重力を基準として表すこと及び力を矢印で表すことができることを知ること。
(ウ) 電気を帯びた物体間に働く力についての実験を行い、空間を隔てて互いに作用し合う力があることを知ること。
(イ) 水の圧力を調べる実験を行い、水の圧力は水面からの深さに関係があることを見いだすとともに、空気に重さがあることを調べる実験を行い、その結果を大気圧と関連付けてとらえること。
化学変化についての観察、実験を通して、化合、分解などにおける物質の変化やその量的な関係について理解させるとともに、これらの事象を原子、分子のモデルと関連付けてみる見方や考え方を養う。
ア 化学変化
(イ) 酸素以外の物質同士が化合する化学変化があることを実験から見いだすこと。
(ウ) 加熱や電流の働きによって物質を分解する実験を行い、分解して生成した物質から元の物質の成分が推定できることを見いだすこと。
(エ) 化学変化の前後における物質の質量を測定する実験を行い、反応物の質量の総和と生成物の質量の総和とが等しいことを見いだすこと。
(オ) 化学反応に関係する物質の質量を測定する実験を行い、互いに反応する物質の質量の間には一定の関係があることを見いだすこと。
(イ) 化合物の組成は化学式で表きれること及び化学反応は化学反応式で表されることを理解し、それらは原子や分子のモデルで説明できることを知ること。
電流についての観察、実験を通して、電流と電圧との関係、電流の働き及び電流と電子の流れとの関係について理解させるとともに、電流と磁界についての初歩的な見方や考え方を養う。
ア 電流と電圧
(イ) 金属線に加わる電圧と電流を測定する実験を行い、電圧と電流の関係を見いだすとともに、金属線には電気抵抗があることを知ること。
(イ) 磁石や電流による磁界の観察を行い、磁界を磁力線で表すことを理解するとともに、コイルの回りに磁界ができることを知ること。
(ウ) 磁石とコイルを用いた実験を行い、磁界中のコイルに電流を流すと力が働くこと及びコイルや磁石を動かすことにより電流が得られることを見いだすこと。
(エ) 直流や交流の特徴を示す現象の観察、実験を行い、直流と交流の違いを知ること。
(オ) 真空放電などを観察し、空間にも電流が流れる場合のあることを確かめるとともに、電流は電子の流れであることを知ること。
化学変化についての観察、実験を通して、電気分解や中和反応について理解させるとともに、これらの事象をイオンのモデルと関連付けてみる見方や考え方を養う。
ア 電気分解とイオン
(イ) 電気分解の実験を行い、電極に物質が生成することを見いだすとともに、この実験結果からイオンの存在を知ること。
(ウ) 電解質水溶液と2種類の金属を用いた実験を行い、電流が取り出せることを見いだすこと。
(イ) 中和反応の実験を行い、酸とアルカリを混ぜると水と塩が生成することを見いだすこと。
(ウ) 中和反応の実験を行い、過不足なく反応する酸とアルカリの濃度と体積の間の関係を見いだすとともに、これをイオンと関連付けてとらえること。
運動についての観察、実験を通して、物体に働く力と運動の関係及び仕事について理解させるとともに、エネルギーについての初歩的な見方や考え方を養う。また、科学技術の進歩と人間生活のかかわりについての認識を深める。
ア 力の働き
(イ) 力の合成と分解についての実験を行い、合力や分力の間の規則性を見いだすこと。
(イ) 物体に力が働かない運動についての観察、実験を行い、その物体は等速直線運動をすることを見いだすこと。
(ウ) 落下運動についての観察、実験を行い、力の働く運動では、時間の経過に伴って速さが変わることを見いだすこと。
(イ) エネルギーに関する実験や体験を通して、物体のもつエネルギーの量は物体が他の物体になしうる仕事で測られることを理解するとともに、エネルギーについての認識を深めること。
(イ) 情報手段としてのコンピュータなどについて、その発展の過程を知ること。
(2) 内容の(1)については、次のとおり取り扱うものとする。
イ アの(イ)については、コロイドは扱わないこと。
ウ アの(ウ)については、結晶の色や形も観察すること。また、重量パーセント濃度にも簡単に触れるが、溶解についての計算には深入りしないこと。
エ イの(ア)については、密度にも簡単に触れること。
オ イの(イ)については、混合物の状態変化には深入りしないこと。
カ ウの(ア)については、異なる方法を用いても同一の気体が得られることも扱うこと。
イ アの(イ)については、実像と虚像を扱うが、レンズの公式は扱わないこと。また、像の位置、像の大きさの関係を実験により定性的に調ベること。
ウ アの(ウ)の音の伝わる速さについては、空気中を伝わるおよその速さを扱う程度とし、気温などとの関係には触れないこと。
エ イの(イ)については、物質の種類による温度変化の違いを水と比べる程度とすること。
オ ウの(ウ)については、帯電列には触れないこと。
イ アの(ア)及び(イ)については、化学変化には熱の発生を伴うことがあることにも触れること。
ウ イの(ア)の「記号」については、指導上必要最小限のものにとどめること。
エ イの(イ)の「化学式」の種類は必要最小限にとどめること。また、「化学反応式」については、簡単筒単な化学反応式が書ける程度とすること。
イ アの(イ)の「電気抵抗」にっいては、物質の種類によって抵抗の値が異なることを扱う程度とし、合成抵抗の式は扱わないこと。
ウ イの(ア)については、電力や電力量にも触れること。
エ イの(ウ)については、レンツの法則、フレミンデの法則は取り上げないこと。
イ アの(ウ)については、現象的に扱う程度とし、イオン化傾向は扱わないこと。
ウ イの(ア)については、イオンの記号として、H+、Na+、C1-、OH-程度を扱うこと。
イ イの(ア)については、物体に力が働くとき反対向きに力が働くことにも触れること。
ウ イの(ウ)については、いろいろな傾きの斜面に沿った運動も扱い、実験を通して規則性を定性的に見いだす程度とすること。
エ ウの(ア)については、摩擦力に抗する仕事も取り上げること。
オ ウの(イ)については、力学的エネルギーのほかに、熱、光、音、電気などのエネルギーも取り上げ、熱放射にも触れること。また、エネルギーは互いに変換し、その総量は保存されることに触れること。
カ エの(イ)については、コンピュータの素子の発展の過程を取り上げる程度とすること。
1 目 標
(2) 生物や生物現象についての観察や実験を行い、観察・実験技能を習得させるとともに、植物や動物の生活と種類、生物のつながりなどについて理解させ、これらの事象に対する科学的な見方や考え方を養う。
(3) 地学的な事物・現象についての観察や実験を行い、観察・実験技能を習得させるとともに、地球と太陽系、天気、大地の変化などについて理解させ、これらの事象に対する科学的な見方や考え方を養う。
(4) 生物とそれを取り巻く自然の事物・現象に対する関心を高め、意欲的に自然を調べる活動を行わせるとともに、これらの活動を通して、自然環境を保全し、生命を尊重する態度を育てる。
身近な植物についての観察、実験を通して、生物の調べ方の基礎を身に付けさせるとともに、植物のつくりと働きを理解させ、植物の種類やその生活についての認識を深める。
ア 植物の生活と体のつくり
(イ) いろいろな植物の花の観察を行い、その観察記録に基づいて、花の基本的なつくりの特徴を見いだすとともに、それらを花の働きと関連付けてとらえること。
(ウ) いろいろな植物の葉の観察を行い、その観察記録に基づいて、葉の基本的なつくりの特徴を見いだすとともに、それらを光合成や蒸散に関する実験結果と関連付けてとらえること。
(エ) いろいろな植物の根や茎の観察を行い、その観察記録に基づいて、根や茎の基本的なつくりの特徴を見いだすとともに、それらを根や茎の働きに関する実験結果と関連付けてとらえること。
(イ) 花の咲かない植物の観察を行い、その観察記録などに基づいて、それらの植物の特徴を見いだすこと。
身近な天体の観察を通して、地球の運動について考察させるとともに、天体としての月、太陽及び地球の特徴について理解させ、太陽系についての認識を深める。
ア 身近な天体
(イ) 天体の日周運動の観察を行い、その観察記録を地球の自転と関連付けてとらえること。
(ウ) 四季の星座の移り変わり、季節による昼夜の長さ、太陽高度の変化などの観察を行い、その観察記録を地球の公転や地軸の傾きと関連付けてとらえること。
(イ) 惑星の動きを観察し、その観察記録及び資料などに基づいて、太陽系の構造と惑星の公転を関連付けてとらえること。
身近な動物についての観察、実験を通して、動物のつくりと働きを理解させるとともに、動物の種類やその生活についての認識を深める。
ア 動物の生活と体のつくり
(イ) 血液の循環についての観察を行い、動物の体にはいろいろな物質を運搬する仕組みがあることを、観察の結果と関連付けてとらえること。
(ウ) 消化や呼吸についての観察、実験を行い、動物の体には必要な物質を取り入れ、不要な物質を排出する仕組みがあることを、観察、実験の結果と関連付けてとらえること。
(エ) 動物が外界の刺激に適切に反応している様子の観察を行い、その仕組みを感覚器官、神経系及び運動器官のつくりと関連付けてとらえること。
(イ) 無脊椎動物の観察を行い、その観察記録に基づいて、それらの動物の特徴を見いだすこと。
身近な気象の観察、観測を通して、天気変化の規則性に気付かせるとともに、様々な気象情報を活用した天気の予測の方法について理させ、天気変化についての認織を深める。
ア 天気の変化
(イ) 霧や雲の発生についての観察、実験を行い、そのでき方を気圧気温及び湿度の変化と関連付けてとらえること。
(ウ) 前線の通過に伴う天気変化の観察結果などに基づいて、その変化を暖気、寒気と関連付けてとらえること。
(イ) 天気図や気象衛星画像などから、日本の天気の特徴を気団と関連付けてとらえるとともに、天気の予測ができることを見いだすこと。
身近な生物についての観察、実験を通して、細胞のレベルで見た生物の体のつくり、親と子のつながり及び生物の進化について理解させるとともに、自然界における生物同士のつながりについての認識を深める。
ア 生物と細胞
(イ) 細抱分裂の観察を行い、その過程を確かめるとともに、細胞の分裂を生物の成長と関連付けてとらえること。
(イ) 交配実験の結果の考察などに基づいて、親の形質が子に伝わるときの規則性を見いだすこと。
(イ) 微生物の働きを調べ、植物、動物及び微生物を栄養摂取の面から相互に関連付けてとらえるとともに、自然界では、これらの生物がつり合いを保って生活していることを見いだすこと。
大地の活動の様子や身近な地形、地層、岩石などの観察を通して、地表に見られる様々な事物・現象を大地の変動と関連付けてみる見方や考え方を養うとともに、人間の生存の場としての地球について総合的に考察させる。
ア 火山と地震
(イ) 火山岩と深成岩の観察を行い、それらの組織の違いを成因と関連付けてとらえること。
(ウ) 地震の体験や記録を基に、その揺れの大きさや伝わり方の規則性に気付くとともに、地震に伴う土地の変化や災害についての認織を深めること。
(イ) いろいろな地形の観察などを通して、大地が変動していることに気付くとともに、それを地球内部の働きと関連付けてとらえること。
(イ) 人間が利用している資源やエネルギーには、天然資源、水力、火力、原子力などがあることについての認識を探めること。
(ウ) 自然の開発や利用に当たっては自然界のつり合いを考えたり自然の保存や調整を行ったりするなど、自然環境を保全することの重要性について認識すること。
(2) 内容の(1)については、次のとおり取り扱うものとする。
イ アの(ア)の「生物」については、植物を中心に取り上げ、水中の微小生物についても簡単に扱うこと。
ウ アの(イ)の「花の働き」については、受粉によって胚珠が種子になることを扱う程度とし、受精などは、内容の(5)で扱うこと。
エ アの(ウ)については、光合成における葉緑体の働きにも触れること。
オ イの(イ)の「花の咲かない植物」については、代表的な仲間を2〜3取り上げ、花の咲く植物と対比させて扱うこと。
イ アの(イ)及び(ウ)については、観察された事実を基に多様な考察を行わせるようにすること。
ウ アの(ウ)については、太陽高度の変化に伴う気温の変化にも触れること。
エ イの(ア)の「惑星」については、主な惑星を2〜3取り上げ、地球と対比させて扱うこと。「恒星」については、自ら光を放ち相互の位置を変えずに星座をつくっている天体であることを扱う程度とすること。
オ イの(イ)の「太陽系の構造」については、内惑星と外惑星の見え方の違いにも触れること。
イ アの(ウ)の「消化」については、消化に関係する1〜2の酵素の働きかけを取り上げ、それらに対する温度の影響にも触れること。「呼吸」については外呼吸を中心に取り上げ、細胞の呼吸は、簡単に扱うこと。血液の働きと関連付けて腎臓(じんぞう)にも触れること。
ウ イの(イ)の「無脊椎動物」については、節足動物や軟体動物を中心に取り上げること。
イ イの(ア)の天気図の作成については、等圧線を引き、気圧配置の様子を知ることに重点を置くこと。
ウ イの(イ)では、気象に及ぼす海洋の影響についても触れること。
イ ウの(ア)の生物の特徴の比較については、脊椎動物を中心に相同器官や発生初期の胚の類似性も取り上げ、生物の進化については、化石など進化の証拠にも触れること。
ウ ウの(イ)については、生産者、消費者及び分解者の関連を扱い、土壌動物については簡単に扱うこと。
イ アの(イ)の「火山岩」及び「深成岩」については代表的なものを取り上げ、代表的な造岩鉱物にも触れること。
ウ アの(ウ)については、地震の現象面を中心に取り上げること。初期微動継続時間と震源までの距離との関係も取り上げるが、その公式は取り上げないこと。
エ イの(ア)については、地層を形成している代表的な堆(たい)積岩も取り上げること。「化石」については、示相化石及び示準化石を取り上げるが、地質年代には深入りしないこと。
オ ウの(ア)の「環境要因」としては、空気、水、土、太陽放射などを取り上げること。
(2) 第3学年において下限の時数を超えて授業時数を定める場合には、第2の内容について補充や深化を図るため、学校や生徒の実態に応じ、適切な指導を行うようにすること。
(2) 生命の尊重や自然環境の保全に関する態度が育成されるようにすること。
4 各分野の指導に当たっては、観察、実験の過程での情報の検索、実験データの処理、実験の計測などにおいて、必要に応し、コンピュータ等を効果的に活用するよう配慮するものとする。
5 第3学年における選択教科としての「理科」においては、生徒の特性等に応し多様な学習活動が展開できるよう、第2の内容について、課題研究、野外観察などの学習活動を学校において適切に工夫して取り扱うものとする。