中等学校通信教育指導要領(試案)

 

序  論

第一章 通信教育の目的

第二章 通信教育の特質と予備的調査

第三章 入学、編入、転学、除籍について

第四章 通信教材の構成

第五章 通信教育に於ける学習指導

附  録

 

序  論

 新しい憲法は、すべての国民がその能力に応じてひとしく教育を受ける権利を有することを規定し、教育基本法もまた、教育の目的は、あらゆる機会にあらゆる場所において実現されなければならないという方針を示している。これまでの学校教育ことに中等以上の教育は、事実上は、一定の時間と資力の余裕あるもののほかは、これを受けることが許されなかったのである。今度あらたに実施される通信教育の制度は、勤労青少年はもちろん、広く一般成人に対してその教育の要求をみたし、進学の機会を与えるという大きな意味を持つものである。これによって、すべての人々が、自由な時に、好きな場所において教育を受けることができるようになったのである。これを学校教育の側よりみれば、これまでの特権的なからを破って教育を広く一般の人々に解放することであり、社会に役立つ教育が進められることになるのである。われわれは、民主的で文化的な国家を建設し、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする理想の実現のために、通信教育の普及が一つの大きな役割を果しうることを確信するものである。わが国を再建設するのための教育では、これまでの画一的且形式的な姿を改め、生徒の生活経験の発展と、それぞれの地域社会の特殊性とがあくまで生かされなければならない。このことはわれわれの通信教育についても同様であって、これまでのいわゆる通信講義録風の考えを改め、新しい通信の手段による学習指導の方法がくふうされなければならない。このような通信の方法による学習指導は、わが国の教育にとって全く新しい領域であり、その方法の確立は今後通信教育を担当する教師の創意とくふうとにまつべきものである。ただ通信教育は、わが国にとって新しい制度であり、また一定の修了資格を附与>する関係から、その基本的な性格と規準とを示すことが必要である。本書はこのような意味から中等学校通信教育についてのあり方の概略を述べたものであって、具体的な学習指導の展開にあたっては、それぞれの学校や教師において独自のくふうをこらすよう、そのためにできるだけ本書を活用されることが望ましい。今後そのような研究やくふうの結果がまとめられ、すぐれた通信教育の方法が樹立されることがわれわれの希望であって、本書はその意味で他の学習指導要領と同じく一つの試案にすぎないものである。